Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
鼻アレルギーの臨床診断は,一般には,既往歴,症状,鼻鏡所見などによつて,比較的簡単になされている。もちろん,これだけでも診断の有力な参考材料は得られるが,それのみでは,鼻アレルギーそのものに対する積極的な診断はできない。鼻アレルギーそのものの診断に,もつとも重要な指標となるものは,局所における好酸球増多現象であるといえる。これは抗原抗体反応の二次的結果として認められる現象ではあるが,かなり特異的なものである。その機序は解明されてはいないが,好酸球増多をきたす刺激については,抗原そのもの,抗原抗体複合物,反応産物,反応により生ずるchemical mediatorsなどが推定されている。このような好酸球増多の意味は,従来からも十分認識されており,また鼻汁の細胞学的検査についても,アレルギーの診断にはもちろん,感染との鑑別などにも必須な検査法として,認識されてはいた。しかし,現在までのわが国における一般的な鼻汁染色法としての,Giemsa,May-Giemsa,Wright染色法などが,いずれも繁雑な手技と,かなりの時間を費すことから,鼻汁の細胞学的検査が一般臨床で広くroutineな検査法としては,実施され難いのが現状であつた。
今回,ここに紹介するHansel stainは,アメリカの耳鼻科医でありかつallergistでもあるDr. Hanselの考案になるもので,その著書の"Clinical Allergy"1)にも記載されており,アメリカでは広く利用され,text book2)3)4)などにも引用されている鼻汁染色法である。わが国でもすでに,日本耳鼻咽喉科全書5)において,鼻アレルギーの項における西端名誉教授のこの染色法についての記載があり,さらにアレルギー性副鼻腔炎の項においても記載がみられる。したがつて,わが国でも早くからこの染色法に着目し,実際に使用されている臨床家もおられることと思う。われわれも数年前より,Hansel® stainをアメリカのLide Laboratoriesより購入し,日常臨床で愛用している。
今回,鳥居薬品(東京都中央区日本橋本町)が,このHansel stainを輸入し販売を開始したので,一般にも容易に入手できるようになつた。Hansel stainによる鼻汁染色法は,染色時間が1分間で,one-minute technicと称している。染色の仕上りも良く,とくに好酸球顆粒の赤色が鮮明に表現される。しかも,鼻汁のみならず,気管支分泌物や結膜分泌物などにも適用できる染色法なので,あえてここに紹介する次第である。
For a quick method of making a diagnosis of nasal allergy, the one-minute technic using Hansel stain which is, now, available in this country, is introduced. By this method the eosiniphils will stand out prominently from the neutrophils by taking an intense staining of the cytoplastic granules.
Copyright © 1970, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.