特集 耳鼻咽喉科手術の危険度
咽頭
扁桃摘出術
野坂 保次
1
,
定永 正明
1
1熊本大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.781-785
発行日 1969年10月20日
Published Date 1969/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207359
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扁桃被膜周辺には,豊富な自律神経網が分布し,術野に近い側咽頭隙には,重要な脳神経,大血管が走つている。さらに手術による身体侵襲も,血液の変化,タンパク代謝あるいは疲労反応からも意外に大きいことが知られている。事実,扁摘による偶発症の発生は,他の手術に比較して多く,ことに局麻手術における致命的な事故は,頸部領域が53%を占め,扁桃に関連するものが35%もある(Hohlbrugger)ことからも,細心の注意が必要である。
従来扁摘に付随した合併症としては,頸部蜂窩織炎,咽側咽後膿瘍,および皮下気腫,縦隔炎,斜頸など手術時の副損傷や創傷感染によるものがあり,また肺炎,肺膿瘍,敗血症や自家中毒症などもあげられている。肺合併症は主に全身麻酔の後にみられるが,敗血症や局所性感染を含めて化学療法の進歩した今日では遭遇することはきわめて稀である。問題になるのはショックと出血である。
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