特集 耳鼻咽喉科手術の危険度
序文
pp.705
発行日 1969年10月20日
Published Date 1969/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207340
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手術に伴う危険。これは臨床家にとつて重大な問題である。扁桃手術に起こるショック死,副鼻腔手術における視神経傷害,耳の手術における顔面神経麻痺など,これにからまる医療過誤の法律問題はだんだんに険悪になつてくる。患者の権利主張が年毎に強くなつて医師の敗訴が増えてゆく傾向だという。
アデノイド手術が乙種では540円,扁摘が1360円で1度ショック死でもあれば数十万円から百万円の損害賠償が請求される。生命の尊さは金銭に換算されぬとは言え,医師もたまらぬ。ジックリ考えて手術に対処する時間的精神的の余裕を健保制度は与えてくれないから触らぬ神に崇りなしと医師は手術を避けるようになる。これでは医療の進歩の妨げともなり患者にとつても不幸である。この不合理の是正は然るべき方面に任せて,さし当つては手術の危険を防ぐことに努力せねばならぬ。この意味でこの特集号が編集されたのである。
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