鏡下耳語
規格化の功罪
大和田 健次郎
1
1東京学芸大学
pp.806-807
発行日 1968年10月20日
Published Date 1968/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492204014
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20世紀になつて文明は急速に進歩した。文明の進歩は工業力を充実させ,生産力の向上となり大量生産が行なわれる。大量生産を行なうために製品は規格化され,規格化された製品が巷に氾濫し,それにつれて生活様式も以前と変つてきている。以前は衣食住のどれについても現在のように既成品はできていなかつた。着るものは自分で縫い,材料を集めて自分で調理し,板を削つて棚を作つた。経済的に余裕ある人は職人を使い工夫させた。そのため名人上手も輩出した。考えようによつては不便であつた。しかし自ら希望するものを作ろうとするために種々の面で工夫が行なわれ,そのために考える習慣を持ち,作られたものには豊かさがあつた。
最近では日常生活に必要なものはほとんどすべてスーパーマーケットで求められ,自分の好みを犠牲にすれば不自由を感じない。このことをいいかえれば現代の生活は規格化された製品に合わせて営まれているといえよう。規格化されたものに従うということは,そのつど考えなくてすむことになり,出来合いのもので間に合わせることになろう。
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