- 有料閲覧
- 文献概要
耐性菌が増し,抗菌剤の選択が従来ほど安直に行なえなくなつた。感性テストを多症例に行なつているうちにますますこの感じが強まり,結果的には依頼心がテストの信頼度(80〜95%)を上廻るようなことになりはせぬかと自省しているが,いろいろな理由からテストを行なうことが出来ない場合にはきわめて慎重にならざるを得ない。医者にとつても患者にとつても怪我を少なく済ませるには最大公約数的な薬を見つけ出すのがよい。そこで1964年12月から65年12月までに行なつたテストのデーターを集めてみた。総数は262例,すなわち急性中耳炎128例(成人96例,一歳未満児32例),慢性中耳炎72例,腺窩性扁桃炎62例である。テストはすべて間接法,昭和ディスク(一剤一濃度)を用い,ハートインフュージオンブイヨンおよび同アガールを用いた。開業医のこととて起炎菌の同定は出来ず,したがつて培地上に生えた全部の菌に対する完全発育阻止帯から薬効を判定した。薬剤名はペニシリン(P),クロラムフェニコール(C),エリスロマイシン(E)コリマイシン(K),テトラサイクリン(T),ロイコマイシン(L),ストレプトマイシン(S),サルファ剤(i),カナマイシン(Ka),オレアンドマイシン(01)の10剤である。
1)成人の急性中耳炎(満1歳以上65歳まで)でみると全身投与で有効と判定されるものすなわち⧻⧺のものはEの71.2%を筆頭にしてKa(67.7%)T(65.4%)L(64.2%)O1(62.7%)C,S,i,P,K(5.2%)の順で,逆に耐性菌,すなわち―のものの検出率を見るとKの63.1%を頭にしてi,P,S,O1,L,C,Ka,E,Tの順となる。上述のE,T,Kaなどの有効率と耐性菌検出率から,1剤投与を行なう上に適中率のもつとも高い薬剤といえばE. Tが第1位となり強いて順位を定めればKaが2位,O1,Lが第3順位ということになる。最近では中耳炎に対して2剤投与,それも内服と注射で行なうのが広く行なわれて来ているが,その意義を検討するために注射と内服の2剤組合せ27通りを設定して有効率をみるとE+Kaが第1位で85.3%,E+S=83.5%,T+Ka=80.5%,L+Ka=79.2%,O1+Ka76.8%(以下略)の順で,いずれも1剤投与の有効率をはるかに上廻り併用効果の利点が現われており,前の1剤投与と同じくT,E,Ka,O1,Lなど相互間の併用効果が大きい。
Copyright © 1966, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.