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Ⅰ.まえがき
篩骨洞手術は,Yansen, Halleらによつて着手せられ,日本においては西端教授(上顎洞経由鼻内経由併用),高橋研三ドクトル(鼻内経由法)によつて始められた。西端氏は近時鼻内法に関心を向けている。荻野朝一博士は鼻内経由と前頭洞経由の併用法を発表した。(荻野法は前頭洞手術として卓抜であるとともに,篩骨洞を鼻内と前頭洞の両方向より行なう良法であると解釈してよい)。汎副鼻洞手術に際しては篩骨洞を中心とする一つの空洞とすることが現今諸家の一致した方針であり,前頭洞,蝶形骨洞が治癒するまでこれら諸洞と篩骨洞との交通を維持しようと企てられている。たとえば佐々木寛教授は前頭洞を骨片をもつて埋めまたある専門家は筋肉をもつて埋めようとしている。鼻前頭交通路の閉塞していない患者の前頭洞鼻外手術において,前頭洞粘膜に穿孔を生ぜしめることなく骨窓を開らき,深呼吸を行なわしめば洞粘膜は呼気時に外界に膨出し,吸気時に陥入することをわたくしらは経験している。わたくし1)は昭和9年「前頭洞内圧の呼吸性変動に関する実験的研究」という論文を発表した。前頭洞および蝶形骨洞はそれらが治癒するまで篩骨洞との連絡が絶えてはいけないが上顎洞においては趣を異にする。それは上顎洞は篩骨洞を介せずとも鼻腔と大きな交通を持ちうるからである。上顎洞粘膜を完全に除去しても篩骨洞手術創より分泌物(篩骨蜂窩は複雑なので病的粘膜の一部残存する場合のことを考慮に入れて)が上顎洞内に流下すれば,その治癒機転を妨げるから篩骨洞は鼻内法のみによるべきだとの主張があるが,鼻内法のみでは角度の関係上篩骨蜂窩を残すことなく操作することは困難であり(たとえばHallesche Zellen),鼻内上顎洞併用法を行なつてもなお粘膜を残すおそれがある(たどえば篩骨洞限界壁の蜂窩および中甲介のMuschelzellen)ことにかんがみ,北村教授2)3)はParanasal法すなわち前頭突起(上顎骨の)を削除することによつて生じる空隙を利用して篩骨洞を手術する方法を提唱せられたものとわたくしは解釈している。わたくしはこれにModifikationを加え篩骨洞を開放している。さらにわたくし4)はこの方法を利用して蝶形骨洞をも手術する方法を案出しこれを「わたくしの蝶形骨洞手術法(Paranasal Method)」4)の題目のもとに発表した。しこうしてその際記述の主眼を蝶形骨洞手術の方法においたので,今度は篩骨洞自体に関する経験事項を以下に述べることにする。
赤池清美博士は上顎洞粘膜(病的)を有茎片として,篩骨洞に移植し長年月ののち篩骨洞が閉塞せざるまま治癒している像をX線にて捕えこれを発表している。筒井喜美代氏は上顎洞よりえた遊離粘膜(病的)を上顎洞に移植している。後藤博士は術後篩骨洞と上顎洞の境界部が両洞間の狭窄をきたし易いことを指摘し,上顎洞粘膜の移植をここに行なうべきだと言つている。しかし現在私は粘膜移植は行なつていない。
By partial removal of the processus front-alis of the maxillary bone in the operative procedure of ethmoidal region through oral approach a space is created here through which removal of the anterior ethmoids as well as the posterior ones arc highly facilita-ted. Following conclusions are drawn:
1. The procedure of operation on the eth- moids through this approach appear to be more rational than by that intranasal route.
2. The present method affords a greater facility in the long-term postoperative observation and treatment of the opera- tive wound.
Comments are made on types of postoperat-ive healing processes; localization in the origin of nasal polyps is discussed; and the fact that the present method of operation may be util-ized in cases where removal of lacrymal sac is required is suggested.
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