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聴力の変化とその判定について
大和田 健次郎
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1学芸大学言語指導研究施設
pp.1028
発行日 1965年10月20日
Published Date 1965/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492203507
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この特集の中に感音性難聴の薬物療法を入れる案があつたが,治療効果の判定が非常に難かしいので除外された。
正常者の聴力でさえ目により時刻により常に変動している。この事は既に以前から指摘されているがその値が以外に大きいのである。日本オージオロジー学会では,聴力検査をどの様に行なつたら,聴力が変化したと云えるかという目的で委員会を作り検討した。ここに云う変動とは日時によつて聴力が動いていることを云い,変化とは何かの原因で,聴力が改善あるいは悪化したことを意味するものとする。これには多くの資料が出された。その結果によると前後各一回だけの検査では駄目であることがわかつた。即ち1日1回の検査で連続して3日間行ない,第1回目の値は捨てて,第2,第3回の値の500c/s,1000c/s,2000c/sの平均値を求める。次に何かの操作あるいは治療などを行なつた後に,再び同様の方法で平均値を出す。この両者の差が10dB以内ならばそれは聴力変動,15dB以上ならば,聴力に変化があつたと認める。両者の中間は不明とするということになつた。更に高音部だけに変化のある例もあるので,4000c/sあるいは8000c/sのような単一周波数では,20dBまでが聴力の変動25dB以上は変化ありと認め,その中間は不明とする,ということであつた。このデータは正常耳について得られたもので,病的な耳の場合に同じ様な変動幅を持つか疑問であつたが,その後の検討で慢性の感音性難聴でもほぼ同様の結果が得られた。
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