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Ⅰ.緒言
鼓室形成術の目的をWitcher1)は 1)a safe ear 2)a dry ear 3)conservation of hearingの3つに要約している。この目的に従つて手術を成功させるためには,多くの条件が満たされなければならないが,中でも鼓膜の形成及び耳小骨連鎖の再建は最も重要な問題である。これは鼓室形成術が提唱されて以来,多くの耳鼻科医に依つて追究されて来た問題である2)。しかし未だ決定的な方法は確立されていない。鼓膜形成材料としてはWullsteinに依る耳後部又は大腿部から得られる皮弁が主流を成している。しかしその生物学的特性から生ずるcomplicationが幾つかあり,それを嫌う人達に依つて外耳道皮膚,静脈,筋膜,骨膜,軟骨膜,角膜,脂肪,心のう膜等も用いられている。しかし,その報告は皮弁移植に比べ,まだ少い。本邦でも最近結合組織を用いた鼓室形成術の報告が幾つか見受けられる3)4)。我々は最近6ヵ月に40間例余りの鼓室形成術を行い,鼓膜形成材料として,皮膚,静脈,筋膜の3種を用いてみた。筋膜を使用したのは,そのうち23例である。少数例ではあり,観察の期間も短かいものであるが,我々の得たfascia graftについての経験を,遊離皮弁及び静脈弁と比較しながら紹介しようと思う。筋膜は全て側頭筋筋膜を使用した。
In 23 cases of tympanoplasty muscular fascia was used for the material of graft. The following points are essentially gained from this experience.
1) The operative technique in obtaining muscular fascia for the graft is important.
2) The muscular fascia seemed to be more durable and easier to take than either dermal or venular flaps.
3) Microscopical studies arc made on the fascial grafts.
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