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口腔および顎骨悪性腫瘍の最近の治療
上野 正
1
1東京医科歯科大学口腔外科学教室
pp.1113-1120
発行日 1964年12月20日
Published Date 1964/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492203357
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Ⅰ.緒言
わが国の諸報告1)2)3)によれば,顔面の下3分の2を占める顎領域には,悪性腫瘍は全身のそれの3%前後に発生すると推定される。このうち各部位についての発症の傾向は,報告者により多少の相異があり,口唇癌はわが国では外国より少ないようである。第1表は英米の報告4)5)6)7)と,われわれの例数8)(昭和5年10月より同38年末までの約32年間に医歯大口腔外科を訪れた症例)を比較したものである。われわれの症例が歯肉に多く,舌に少ないのは,歯科の特殊な傾向と思われるが,他方この症例から上顎洞癌,大唾液腺癌を除いて,国際対癌連合の提案する口腔粘膜癌分類に従うと(第2表)8),舌癌は約20%になり,欧米の数字に近づいて来る。
これら口腔に主に症状を現わす症例は,一部は耳鼻科を訪れ,あるいは耳鼻科医によつて発見されるであろうが,他方,歯科医によつて異常な病変として発見され,われわれに紹介され来院するものも少なくない。またこの領域の悪性腫瘍の治療には,歯牙の処置をどうするかが一つの問題点となるし,さらに治療終了後咀嚼機能の回復には歯科医の協力が必要となる。この歯牙の処置,術後の機能回復の点などに主眼をおいて,われわれの経験を述べたい。
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