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はじめに
癌の治療法としては,従来,手術的療法と放射線療法とが行なわれてきた。手術的療法は,癌病巣を完全に取り除き,禍根を根本的に除去しょうというものであり,放射線療法は,癌細胞の発育を阻止して,これを撲滅しようという考えによるものである。薬物により,癌細胞をたたくという考えは,随分古くから考えられていたが,癌細胞に作用する薬剤は,同時に,その宿主である人体の正常細胞にも害を与えることが多いので,利用されることが少なかつた。しかし,最近になつてから,比較的宿主の細胞に害を与えない物質で,癌細胞に有効な薬剤が,いろいろと発見されてきた。それにしても,もし,癌組織の部分のみに抗癌物質を,高濃度に投与出来るならば,全身には比較的無害に薬物を投与出来るのではないかということは,誰でも考えることであろう。抗癌剤の動脈内持続注入法というのも,この考えに基づく一つの方法である。
上記観点から,1950年Klopp1)が,腫瘍支配動脈にポリエチレンチューブを挿入し,Nitrogen mustardを動脈内に注入することを初めて試みた。Kloppは主として,頭頸部悪性腫瘍の末期症例に対して,本法を試みたのであるが,その成績は,10例中殆んどの症例に腫瘍の縮小又は疼痛軽減を認めている。と同時に,注入領域の皮膚,粘膜に,紅斑,浮腫,脱毛などの放射線障害と同様な副作用を認め,全身的にも,白血球減少,骨髄機能の低下を来したことを報告している。しかしながら本法は癌化学療法に新しい分野を開いたものということが出来るのである。その後,抗癌剤の開発も進み,又挿管法,固定法なども検討され1959年Sullivan2)は,代謝拮抗物質であるMethotrexateを用いて,動脈内持続注入法を発表した。彼は同時に,中和剤としてCitrovorum factorを筋肉内に注射することを試み,全身的副作用を防こうとした。その結果,18例中,10例に部分的乃至は完全な腫瘍縮小を認めたと報告している(第1表)。
Today numbers of chemotherapeutic agents are used for cancer therapy, but have common defect, that is, they are not only toxic to cancer cells, but also to adjacent normal tissue cells. Therefore it is important to increase the intensity of the regional effect and decrease systemic toxic effects. By intra-arterial administration of these agent, a higher drug concentration could be obtained in the tumor than in the remaider of the body. We have managed 22 patients of the head and neck tumors undergoing intra-arterial infusion of Endoxan or Toyomycin. The procedure consisted of the retrograde insertion of a polyethylene tube through the superficial temoral artery or facial artery. The drug was injected continuosly through the catheter. The results obtained show that six patients received significant regression and in twelve the tumor regressed partially. Toyomycin is more effective than Endoxan in referrence to intra-arterial infusion. We conclude that intra-arterial infusion with Toyomycin is an excellent procedure for malignant disease of the head and neck.
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