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耳漏の薬剤療法に関する研究(第1報)
鍵冨 敏郎
1
,
昇塚 清臣
2
1新潟大学医学部耳鼻咽喉科学教室
2新潟鉄道病院
pp.167-180
発行日 1964年2月20日
Published Date 1964/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492203215
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Ⅰ.緒言
近年,抗生物質,スルファミン剤,副腎皮質ホルモン剤等の薬物の研究が進み,更に聴力増進の為の手術手技も進歩しては来たが,依然として或る種の中耳炎の中には,耳漏を停止せしめるのに難渋する例が少なくない。特に,岩沢1),吉弘2),川嶋3),清水4)らの指摘する如く,菌交代現象の現われとも考えられる緑膿菌を主体とするグラム陰性桿菌の検出率が近年次等に高くなつて来た事や,更にそれらの菌群が,極めて少数の抗生剤にのみ感受性を示すに過ぎず,臨床上では,或る意味で難治の中耳炎が増加の傾向にある如き感さえ与えている。かかる点より,著者らは疾患の種類細菌の種類等より,如何なる耳漏が難治であるか,或はそれら難治の耳漏を停止せしめる最良の薬物は何か等を研究した。現実には,かかる厄介な細菌の増加と,手術手技の複雑さは,再手術,再々手術を要するものさえ出現している事などより,手術の前後に用うべき薬剤等も研究の対象と考えた。
以下著者らの検討例から大凡の傾向を知り得たと思うので,第1報として報告する。
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