多発性脳神経麻痺を伴つた耳帯状疱疹の1例

A HERPES ZOSTER OTICUS ACCOMPANIED BY A MULTIPLES PARALYSIS OF CRANIAL NERVES

　緒論

　1904年Körnerは耳部神経痛・聴神経障害および顔面神経麻痺を随伴する耳介，外耳道，鼓膜に発生する水疱性発疹に対し，耳帯状疱疹と名づけたが，1909年Huntによつて詳細な検討が加えられHunt氏症候群といわれている。その後Haymann, Minkowskyらによりその神経障害の拡大について種々検討が加えられ，わが国においても，多数の報告がなされて来た。今回，われわれは，47歳の一婦人において5年前より頑固な右側上，下肢の関節痛を来し，その治療中に広範囲にわたる多発性脳神経麻痺を伴つた耳帯状疱疹の1例を経験したので，その病歴を報告し，若干の考察を加えたいと思う。

A case of herpes zoster oticus which caused complicating disturbances in various cerebral nerves is reported; the routes of the nerve in-vasion are discussed.