特集 耳鼻咽喉科におけるショック様症状とその対策
経験例
ショック様状況についての経験例・13—扁剔における偶発症,とくにショック様症状
野坂 保次
1
,
定永 正明
1
,
上野 敬之
2
1熊本大学医学部耳鼻咽喉科学教室
2熊本大学
pp.1107-1110
発行日 1963年12月20日
Published Date 1963/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492203177
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緒言
手術に関連して起るショックは,耳鼻咽喉,口腔あるいは頸部の手術に際して多いといわれるが,中でも扁剔時に最もしばしば遭遇する。これを鈴木が蒐集した耳鼻咽喉科領域のショック42症例についてみても,半数の22例が扁剔やその麻酔によつて起つており,扁桃手術時にいかにショック様症状が発生し易いかが推測される。
扁剔時の一次型ショックの原因には,プロカイン,薬物,アナフィラキシー・ショックなどがあげられている。しかしこの他に扁剔が多くは坐位で行なわれる頭位の関係や,扁桃周囲の組織が粗懸な結合織で注射された局麻薬の吸収が迅速であり,かつ咽頭旁隙には主要な血管,神経が走つている解剖学的の特性も存在する。さらに扁桃実質や被膜に比較的豊富な自律神経網が分布することからもReilly現象として理解される侵襲時の自律神経過剰刺激興奮による非特異的症候群の関与も大きいと思われる。これを局麻のみについて見ても,致命的な偶発症は頸部領城が53%を占め,その中で扁桃に関連するものが35%に認められることがHohlburuggerの論文に記載されている。
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