特集 耳鼻咽喉科におけるショック様症状とその対策
〔総論〕
ショックの一般的処置—蘇生法を中心として
藤田 五郎
1
1自衛隊中央病院
pp.997-1002
発行日 1963年12月20日
Published Date 1963/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492203157
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はじめに
このたびのショック特集を計画された主旨は,手術・治療上からおきる耳鼻咽喉科領域でのショック症例が多いということであるように承つている。実際に,ショック研究の歴史とか,その発生機序に関してのいろいろな学説が裏書きするかのように,耳鼻咽喉科の領域に含まれている頭部・顔面・頸部の部位には,一次型であれ,また二次型であれショックを発生するのに好都合な諸臓器とか諸機能が存在していることに気がつくものである。ただ,命題「ショックの一般的処置」は,ショックそのものの本態が幾分究明されてきている現在,しかも"病態生理学"の非常な進歩がショックの発生機序や分類をある程度方向ずけてきている現今,あらゆるショックに共通な処置法として一概にお話しすることはなかなかむづかしい問題のように思う。
ショック研究の歴史をひもといてみると,約200年前に"銃弾ショック"的考えかたに発したといわれるショックの概念は,今日広く信じられているそれと比較してみて本質的にはそれ程の大きい変化があるとは思えない。しかしながら,ショック研究史上に現われるショック成立の機序についての諸説を一寸ひろつてみると,血管運動麻痺説,脂肪栓塞説,毒物説,副腎説,神経説,ミオグロビン説などそれぞれ皆相当な意義をもつていて,ショック治療のありかたを考察していく場合にも,これらの諸説がショックの分類法と不可分の関係にあつてきわめてたいせつなものとなつている。
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