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Ⅰ.緒言
耳下腺の腫脹疼痛をともなわない唾液腺疾患はややもすれば見逃しやすく,とくにSjögren氏症候群で耳下腺腫脹のない場合は,眼の症状が唯一の症状であることも少なくない。それは他の粘膜の分泌機能低下が容易に証明され難いことが少なくないからである。またその呈する症状が眼科その他の科とも関連性をもつため,患者が直接耳鼻咽喉科を訪れることが少なく,ただちに適確な診断をくだすことが必ずしも容易なこととはいい難い場合が多い。しかし唾液腺造影法(以下唾影法と略す)の進歩や耳下腺唾液の物理化学的検査等により,概ね診断がつけられるようになつた。我国では特に少ないわけでもなく注意して問診すれば外来でしばしばみられる。因みにSjögren氏症候群とは,1933年Sjögrenが本症の症状を総括的病理的に検討し報告したもので,涙腺唾液腺のSicca Syndrorn(時にはこれらの腫脹を伴う場合もある)に関節炎の加わつた症状を主徴とするもので,我国では1938年岡島国彦氏がはじめて報告している。欧米では集団的な統計が数十例あるというが,本邦では今次大戦以前には僅かに2〜3例の報告があるが,戦後はかなり報告数も増加し岡島・奥田等の20数例の記載がある。しかし完全な症状を見得たものは阿部の1例のみといい,最近ではMühler(1961)の1報告があるにすぎない。私は最近右側耳下腺の先天性欠損を有するSjögren氏症候群の1例を経験したのでその概略を報告する。
A case of Sjogren's syndrome is reported. The patient was a farmer, aged 72. Parotid gland visualization revealed congenital absence of the right parotid gland. Administration of parotin in this case showed a remarkable improvement in the hearing test. The author states that parotid gland visualization is indispensable in reaching a di agnosis in these cases.
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