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I.緒言
工場衛生管理法として年2回に亘り定例身体検査が行われることになつており,当工場としても約2000名の身体検査がなされそれに伴つて聴力検査も他の諸検査と同時に行われている。そもそも聴力検査は単一なるものでなく診断用の精密検査を行うには莫大な時間と労力人員を必要とするが聴力管理ではできるだけ広汎に行われ全員について大略の聴力状態が常に把握されていることが重要と考える。従つてスクリーニングを目的とする聴力検査が必要である。堀口等は職業性難聴の簡易検査法として4000CPS音のみによるスクリーニングテストを提唱しておるがオージオメーターを多人員に頻回に用うることも能率的ではなく亦オージオメーターの設備なき支所事業所では尚更のことである。
時計音測定法による聴力の評価はその雑音なる故を以て純音検査に比較され得ずとくにオージオメーターの発達せる今日では全く省みられない状態であつたが,原口等は時計音が4000CPS附近にその主勢力があり,この附近の検査に適しておることを提唱,騒音性難聴の簡易検査法としている。従つて工場聴力管理に時計音測定法はその簡易さとくに多人員全員について大略の聴力状態が常に把握される点において最適な検査法と思われる。時計音聴取距離短縮は雑音のため低音部と高音部との相関性に於いて行われることは原口等の図説によつて示されており,中低音部の聴力が低下すれば聴取距離は更に低下しこの附近になれば誤差が大きく実用性がないことは勿論のことであるが,中低音部並びに高音部の聴力損失のスクリーニングを主目的とし当工場従業員全員について時計音測定法を行い,聴取距離短縮者群の高音部(C5)並びに中低音部(言語聴取域)聴損との関係に就いての統計的観察及び3年経過後の関係とを観察してその価値に就いて考按をなしたので御批判を乞う次第である。
The watch-test was employed in screening a large group of factory warkers for hard of hearing. Those who were detected as the ability of hearing the watch at a distance shorter than what was adopted as the nor-mal were examined later by audiometer. It was found that this means of testing failed to make a quantitative determination of loss of hearing but it was highly useful for ma-king a fast screening of a lage group of em-ployment personnel.
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