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1.緒論 外界からの刺戟を受けた生体はいろいろの反応によつて,それに対処しようとする。しかし,この刺戟が生体の反応力の閾値を越す程,強大である時にはショツク症状が発現する9)。人間においては,この反応はきわめて急速に進行し,しばしば死の転帰をとる。従つて速かに治療処置をとり患者を救うことが先決問題であるので,この現象を細かく観察することは容易なことではない。そのため,ショツクに対する,わたくしたちの知識を広めるためには,ぜひとも実験的方法をとることが必要である。
ショックの発生実験に関しては,従来いろいろな方法が報告されて来た。実験的に犬の股動脈より出血させて,ショツクを起させるWiggers29)の出血性ショツクはその典型的なものであり,馬血清によるアナフイラキシーショツク4)35),外傷性ショツク3)7),またヒスタミンショツク3)8)などの実験は,ショツクに対する貴重な知見を得させてくれるが,耳鼻咽喉科領域における扁桃手術時のショツク,或は頸部手術時のショツクなどに対しては,いずれも十分に適した実験方法であるとは云えない。扁桃手術或は頸部手術時ショツクのメカニズムに関しては,従来,胸腺淋巴体質説12)23)36),薬物の血管内誤入5)34),迷走神経障碍説5)12),頸動脈洞刺戟或は麻痺説5)などいろいろの説があるが,いずれも,その本態を十分に解明しつくしているとは思われない。
Experimental shock was produced in guinea pigs by instituting injection of croton oil into submucous tissue of the palate.
In order to produce shock in these animals 0.1 cc of croton oil proved to be sufficient and 35% of the number thus treated resulted in death due to shock; wereas, the number of deaths due to administration of similar agent and dosage into abdominal subcutaneous tissue proved to be none whatsoever. From these facts, it is conjectured that the region of the palate might be more vulnerable to causation of shock than areas elsewhere; that the resulting shock of the present experiment might be due to undue stimulation of the autonomic nervous system.
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