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緒言
現在我々が行つている音叉或はオーデイオメーターによる聴力検査は被検者の答申を唯一の指標として,それに信頼限界の決定を依存するより方法がない。そのために此の聴力検査は正確な答申の出来る年齢の者にして且正常な精神及び知能の持主にしか用いられない。我々が日常の聴力検査で最も困難を感じるのは充分応答の出来ない小児の場合である。又その他に成人であつて,知能発育の悪い者,聾唖,障害保障請求のための仮病の場合がある。こゝに所謂他覚的聴力検査の必要が生じてくる。被検者の持つ主観を棄てて検者が直接目で見る事の出来る被検者の反射や行動を指標として正確な結果が得られるならば,此の聴力検査は最も正確な方法になろうし,又聴力検査の応用出来る被検者の範囲も更に拡大され得る。此の意味に於ける聴力検査としてPGSR-Audiometry即ちPsycho-Galvanic-Skin-Response (又はRe—sistance)—Audiometryがある。此のAudiometryは外国に於てはKirchner, Goodhill, Rehamann, Bordley, Hardy, Bengt Barr, Tato, Faure等が試み,何れも相当高い実用価値を報告し,且実際に臨牀的に用いている様である。確かに条件反射も電気的皮膚反射も客観性と云う点に於ては優れており,若し両者の併用による聴力検査が充分信頼するに足り,応用範囲も広く,且日常臨床上に簡単に取扱えるならば,我々も大いに之を利用すべきであると考えるが,条件反射も電気的皮膚反射も個人差,測定装置,測定時の環境等種々の条件に大きく左右されるので,果して此の方法が上述の我々の希望を満してくれるものか否か,我々は之等の諸条件及び装置に検討を加えるべく,種種の予備実験を行い,更にその信頼限界に就て考察を加えた。
被験者を防音室内に入れ,先ず予備検査として笛,ベル,打楽器等で音に対する反応を観察し,聴力のある事を確めた後,オーデイオメーターにて充分聞え得ると思われる強さの純音,或は最大出力の純音を一定時間聞せる。此の最初の音刺激の時は無条件反射が出て検流計が振れ,又年齢によつては応答によつて聞えるか否かを確める事が出来る。此の音刺激の直後に無条件激刺を与え.るとPGSRが起るが,之を何度も繰返していると遂に条件刺激たる音のみで恰も無条件刺激が与えられた如き皮膚反射を起すようになる。この時が条件反射成立で,その後は純音のみを与えて皮膚反射を観察しながら閾値を決定する。PGSRを捕えるための電極は大きさの異つた亜鉛板電極を用い,手掌と前膊,或は足掌と下腿につける。手掌或は足掌につける電極は1×1.5cmの矩形で陽極側にし,前膊或は下腿につける電極の大きさは2×3mcとした。此の電極を第1図の如き蓄電器式回路,或はブリツヂの一つの腕に接続して,皮膚抵抗の変化による電流の変化をVibratorに導き,オツシロペーパーに記録した。音に続く第2刺激としては先ずどの様な刺激が最も適当であるかを検討するために検査室を暗室にして被検者の両眼を薄い布で被い,純音刺激直後に光刺激を与える方法,同じく暗室内にて瞬間的に子供の喜びそうな絵をスライドして見せる方法,及び純音刺激直後に電流刺激を与える方法を試用してみた。電流刺激には第2図の如き回路による蓄電器放電電流を用い,電流の強さを適宜変化させながら刺激した。次に之等の方法によつて得だ結果が果してどの程度信頼出来るものかを調べるために,従来の純音聴力検査の出来る被検者を選び,両者の結果を比較し,更に種々の難聴を訴える幼児に本聴力検査法を試用した。
Shimizu and associates favor the use of psy-chogalvanic skin-response method in testing infants for the state of hearing among whom the ordinary hearing tests are inapplicable. Total deafness or the amount of residual hea-ring in various tone levels may be obtained by this method.
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