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緒言
吾が耳鼻咽喉科領域に於て日常最も悩まされる疼痛は,扁桃摘出術後の疼痛と耳癤の疼痛である。扁摘後の疼痛に関しては従来余り重要視されず,耳鼻咽喉科扁摘特輯号に於てすら,この鎮痛に就ては山川教授1),千葉2),黒須3),津田4),神尾5)氏等が言及されているに過ぎず,就中積極的な疼痛緩解方法に就て述べているのは神尾,黒須両氏のみである。即ち神尾氏は扁摘後の疼痛の成因に就て検討し,VB1の皮下注射が自発痛緩和に役立つと報じているが,尚個人差が大であり又嚥下痛緩和には役立たないようである。又黒須氏はEfocaine(Fougera社)を創面に分注して非常に有効なる事を僅かに言及されているが,其後の観察報告を見ない。又最近北川教授6),奧田氏7)等は1%プロカインを下甲介後端粘膜下に注射して扁摘後無痛に経過し得たと報じているが,吾々の経験では必ずしも適確な効果を示さなかつた。他方耳癤の疼痛,特に膿瘍形成前に発赤腫脹は軽度でありながら高度の疼痛を訴える場合等は化学療法の発達した今日でもその疼痛の急速な緩和には役立たない。古屋氏8)等はメタクレジールアセテイト(クレジン)を斯る耳癤の疼痛に用いて有効であると報告している以外,この種の報告は見当らない。
今回吾々は万有製藥より持続性局所麻酔剤Longcain(以下LCと略す)の試供を受けたので,之を扁摘後疼痛(28例)及び耳節痛(16例)を緩和する目的で使用し,予期以上の効果が認められたので茲に報告し,諸賢の御追試を乞う次第である。
Akaike and associates say that Longcain, an agent for use in local anesthesia, is a satisfac-tory analgesic in alleviating pain that occurs after tonsillectomy and in neuralgic condition of the ear.
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