痛み
麻薬性鎭痛剤
清原 迪夫
1
1東大麻酔科
pp.640-642
発行日 1968年5月10日
Published Date 1968/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202222
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
アヘンの渡来
アヘン採取は紀元前3世紀ごろ,小アジアに始まつたといわれ,6世紀ごろから知られたエジプトアヘンは,7,8世紀ごろアラビヤ人によつて,インド,ペルシア,中国と伝えられた。中国におけるアヘン喫煙は,当初,官吏の一種の特権であつたが,その習慣はまもなく一般に普及し,18世紀末からは吸飲料として大流行し,アヘン窟に集まつて吸飲するアヘン隠者が増加した。そのため清朝はアヘン栽培制限を企てたところ,ぬけめのないオランダ,ポルトガル,英国の貿易商は,この禁令によつてアヘンを中国に輸入し,暴利をむさぼつたわけである。実際,東インド商会に年間大箱2万箱を持ち込んだといわれ,これがついには,かのアヘン戦争(1840-42)をひき起こし,清朝滅亡の端緒をつくるにいたつた経過は,周知のところである。19世紀の終わりには100万ポンドのアヘンが中国に輸入され,成人の1/4がアヘンたばこの喫煙者であつたという。
日本では,室町時代にインドから津軽地方に渡来し,江戸時代には関西へ栽培が伝わり,明治初期には少量ながら生産されていた。現在では,ケシの栽培はアヘン法,生アヘンは麻薬取締法により規制され,粗製薬品の輸入は国際条約で規制されている。
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.