特集 耳鳴と眩暈
第2章 眩暈
眼科領域から見た眩暈
杉浦 清治
1
1東京大学眼科教室
pp.869-875
発行日 1955年12月25日
Published Date 1955/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201466
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Ⅰ.眩暈の定義
眩暈の定義については,多数の意見があげられていて,或者はその本態を仮性運動に置き,或者は植物神経系に,或者は心理方面に重点を置く等一致しない。例えばW. Rwssel Brainは,之を"The consciousness of disordered Orientation of the body in space"と定義し,上野氏は「位置,運動の正当な判断を失つた状態にて,筋緊張の保持及び筋の協同作用が困難或いは不可能になり,身体動揺し,遂には?倒するに到る。この時自覚的には身体の廻転感を生じ,或いは周囲の固定物が動く様に感じ,気分悪く,嘔気,嘔吐を催す」と述べている。又山下氏は,数種の症状要素の集合からなる症候群として,運動及位置覚異常(又は錯誤)並びに触覚異常の他に,随意筋,不随意筋に現われる症状,及び感情要素の5因子を挙げている。他方Veitsは錯覚が主要なる役を演じていると云う。
この様に眩暈の定義は人により区々であるが,その本態の根底に在るものが,W. Russel Brainの云う如き,空間に於ける身体の定位障碍を意識することによつて起る異常感覚にあることは争えない。そして附随する嘔気,嘔吐,顏面蒼白,発汗,心搏異常等は自律神経反射によるものであろう。
Copyright © 1955, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.