特集 耳鳴と眩暈
第1章 耳鳴
耳鳴の治療
後藤 敏郎
1
1長崎大学
pp.785-795
発行日 1955年12月25日
Published Date 1955/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201458
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
耳鳴は一つの症候であつて,局所的な中耳疾患から各種の全身的疾患に伴つて現れてくるが,夫等疾患の固有の症候ではない。それよりもう一つ奧の何等かのプロセスによつて起る症候である。そのプロセスが何であるかわからない儘に現在の耳鳴の治療が行われている。種々なる憶測のもとに行われた治療法のうち,多少の効果のあつたものが文献に残されてゆく。それは先進者の努力の集積として残されている。積極的に実験的に耳鳴の発現のプロセスを把むことが難しい性質のものであるから,この経験的に積み重ねられた各種の治療法をその主なる作用機転に就て深く考察しそれに従つて整理検討してみることは,耳鳴の治療法の原則的なものを理解することが出来るのみでなく,その成因を把む上の有力なる研究方法である。現われた臨床的事実に就て考えることがAudiology的研究方法よりも先行するか,或は平行して行われなければならないものと思う。如何なる仮説も臨床的事実を説明することができなかつたならば受け入れられるわけにはゆかない。
文献に報告されている治療法は或種の耳鳴の消失の条件を呈示しているものである。之は又耳鳴の成立プロセスの何れかの部分に触れていると思われる事実である。この意味から著者は先ずこれ等の治療法をその意図する目的に従つて整理分類して紹介すると共に,之等に就て考察した結果から従来の自説に捉われず今更めて耳鳴め成因を考え,治療の根本的方針に就て論じてみたい。
Copyright © 1955, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.