Japanese
English
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開鼻声の手術的療法
Surgical Treatment for Rhinolalia aperta
林 義雄
1
,
酒向 睦
1
1東京診療所
pp.257-261
発行日 1955年5月20日
Published Date 1955/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201323
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開鼻聲の出現
食物を嚥下するとき軟口蓋は後上方に挙上して咽頭後壁に生ずる所謂パツサヴァント(Passavant)隆起や側壁の隆起(Plica Salpingopharyngea)と共に鼻咽腔と口腔とを遮断する。これと同じことが,発音の時にも行われるのであって,唯発音の場合に嚥下の時と違う点は,鼻音の場合は勿論であるが,母音の時などには嚥下の時のようにピツタリ閉ぢることはなく幾らか開いていると言うことである。但し此点に関しては論争があるが,ここでは触れない。母音の種類に由つてもその閉じ方の形が夫々違つていることは林1)が既に報告している。即ち程度の差或は五十音によつても違うが,正常な発音のためには舌や歯,唇を除いては軟口蓋並びに咽頭後壁が重要な役割をしていることがわかる。
若し今軟口蓋の機能を害するような疾患,例えば口蓋破裂を始め,軟口蓋麻痺,粘膜下口蓋破裂,扁桃腫瘍や扁桃周囲炎などが起れば鼻咽腔通路の遮断に主役を失うわけである。従つて嚥下も障害されるばかりでなく,鼻音以外の発音も不明瞭になるわけである。鼻音即ちm,n,やngはもともと鼻に抜けなくてはならぬ音であるから鼻音は障害されることはないのは当然である。
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