開鼻声，嚥下困難を主訴とした皮膚筋炎の1例

DERMATOMYOSITIS WITH DISPHAGIA AND NASAL VOICE, A CASE REPORT

　I．はじめに

　耳鼻科領域の愁訴で訪れる患者の中には時としてその背後に全身系統的疾患がひそんでいることがある。たとえば最近本誌に報告された"開鼻声を主訴とした小児重症筋無力症の1例"の如きもその1例と言えよう。われわれも開鼻音，嚥下困難などの軟口蓋麻痺を主訴に訪れた患者が，いわゆる膠原病の1つとされている皮膚筋炎（以下D．mと略）であり，これらの症状が本症の部分症状にすぎぬことを経験した。局所所見のみにとらわれず，広く全身所見を見落さぬ注意が必要なことは言うまでもないことであるが，耳鼻科領域でも，D．mに関する知識を持つことは必要かと考えられる。そこで自験例の概要を記載して諸家の参考に供したい。

　A case of dermatomyositis in a woman, aged 57, who complained of nasal voice and difficulty in swallowing, is reported. Electromyographic examination showed a definite weakening of the palatopharyngeal muscles.

　The patient showed some improvement under steroid therapy but further stereoscopic examination revealed a considerable narrowing of the upper portion of the esophagus.