特集 耳鼻咽喉科診療の進歩
気管支異物療法の進歩
山川 強四郎
1
1大阪大学
pp.794-796
発行日 1954年12月15日
Published Date 1954/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201254
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1868年フライブルク大学内科教授KussmaulはParisのDesormeaux(デゾルモー)の尿道鏡(発明は1853)(註,実は1.5cm×24cmの大さ故直腸鏡であつたろう)を取寄せ之を食道に挿入して気管分岐部の高さにあつた食道癌を見た。後同(フライブルグ)町のレストーランで興行して居た呑刀師について観察して円い管といびつ形の管とを作らせて之を食道に挿入して見たが暗くてよくは見えなかつた。
Kirsteinは食道を検して居たら偶然に食道鏡が気管に入つた。其患者は大動脈瘤の病人であつたのか甚しい搏動を認めたので「気管の最危険なのは其下半部で殊に左側壁に当り現わる動脈搏動に一致する正規的膨隆は直達検査法を行い得らる患者には常に見らるる特異の現象であつて硬直な器械の送入には深甚の注意を要する」(1896)と警告した(高崎日耳鼻26巻S. 353より)ので直達鏡を誤つて気管に入れぬよう注意が払われた。ところが,1897年3月,63歳の男,気管支に魚骨を吸込んだ例に遭遇した。Killianは勇気を奮つて"mit Mut"故意に"absichtlich"即誤つてでなく故意に管を気管に挿入して右気管支から其魚骨を摘出する事に成功し1898年Bronchoscopiadirectaと命名発表した。これが直達(内視)鏡検査で異物を除去した最初の例である。
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