特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科における手術の危険度
咽頭
35.気管・気管支異物,食道異物摘出術
北原 哲
1
1防衛医科大学校耳鼻咽喉科学講座
pp.170-171
発行日 2002年4月30日
Published Date 2002/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902553
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はじめに
気道・食道異物には,多種多様なものがあり,動物性,植物性,鉱物性などに分類されている。文献的に多くみられるものは気管・気管支異物として豆類,種,玩具,針,石,医原性異物(歯科用リーマなど),食道異物としてコイン,魚骨,義歯,PTP,ボタン型電池,玩具,肉片などがある(図1〜3)。異物にはまた時代的背景も反映され,屋根職人の釘や主婦の縫い針の気道異物などはほとんどみかけなくなった反面,PTPや電子機器の発達によってボタン型電池の食道異物などが出現した。一方,摘出に使用する器具も硬性気管支鏡,硬性食道鏡よりもフレキシブルファイバースコープが使用される頻度が高くなり,さらに麻酔学の進歩は,摘出術と術後管理をより安全にしているのが現状である。
気道・食道異物の診断がつけば,原則として緊急な対処が必要になるが,緊急度の極めて高いものとしてボタン型電池がある。ステンレスの電池ケースが腐食し,電池の内溶液が漏れることはないが,正極から負極に電流が流れ,これによって発生するアルカリが強い腐食作用を示す。食道内の停滞時間が長いほど組織の障害は大きくなる。新しい知見であろう。
日常臨床では,小児と成人で対処の仕方に差があり,高齢者を除くと年齢が若いほど取り扱いに気を使う。
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