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Meniereに対し鐙骨切除を行つて症状を除去したのはCrockett(Ann. Oto. 12:67,1903)であつたろう。彼は2例をこの手術で全治せしめている。この手術では楕円嚢および膜性迷路の一部が切られていると思われる。鐙骨切除だけでは(膜性嚢のひとつを開かなければ),Ⅷ神経機能が全く失われることはない(Proc. Roy,Soc,Med. 47:663,1954)骨性外側半円管を開けただけでは,高音でひどいメマイがおこり,Tullio現象がおこつて来る。Portmann(J. Laryng. 42:809. 1927)はendolymphatic sacを誘導する方法を考案した。しかし本法は正しくendolymphatic sacを開いたのか,蜘網膜下腔をひらいたのか確認しにくいので,その後追試者がない。著者ら,Adams(1938),Flet(1947)らが本法で成功を収めた。この嚢をひらいてもまもなく瘢痕でふさがり,endolymphatic hydropsを来しMeniere症状がつよくなるのがある。それでHouse(Laryngoscope 72:713,1962)はこの嚢と蜘網膜下腔との間にプラスチックを入れ,少くとも聴力く50dbの早期症例に,聴力・メマイの改善を収めている。聴力がもつと低いときには成功しない。したがつて早期で,かつ1側性のときには,以上のような破壊法がえらばれるべきであろう。ただ破壊法では隣接組織に全く傷害をあたえないことが必要であり,他側が罹患したときどうするかが問題となる。著者900例の経験では,1側術後に他側が新に罹患するのは6%の頻度で,おそらく高々10%附近だと思われる。それで著者はやはり迷路手術を敢行する方法をえらんでいる。周囲組織傷害を避けるために,著者はアルコール注射,ジアテルミーは用いないことにしている。脳外科における定位固定手術のような方法が今後応用されれば,もつと安全になるであろう。
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