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慢性副鼻腔炎に對する治療については,古來より種々論議が重ねられ,手術的療法および保存的療法に關する幾多の研究が試みられてきたのである。ことにサルフア劑の發見以來,多數の人によつて保存的療法に關する研究が發表されて,いまや化學療法の副鼻腔炎への應用についてはほとんど研究し盡された感じがするのである。
化學療法劑および抗生物質の局所への應用方法としては,1)鼻腔内噴霧法2)中鼻道滴下法3)上顎洞内注入法4)霧滴陰壓療法5)プレッツ氏法などが行われている。しかしてこれらの方法に用いる藥劑は水溶液として應用したのがほとんどで,わずかに福島氏がペニシリン(以下ペと略す)ワセリンおよびラノリンの上顎洞内注入法について報告しているが,好結果は得られていない。また石川氏が急性上顎洞蓄膿症に油臘ペ7.5萬單位に40%モルヨドール(以下モと略す)を混合して洞内に注入しているのをみるのみである。ペ水溶液上顎洞内注入法は尾崎,白川,田村,近藤その他多數の人の報告があり,いずれも著效率は相當高く,自覺症状は急速に好轉し他覺的所見も良好となる模樣であるが,頻回の注入に拘らず洞内瀦溜液は完全に消失しない例が非常に多く,完全治癒に至らないのが多いように見受けられ,一般に非觀的傾向にあるとみて差支えない。しかしながら單なる洞洗滌のみにても,頭重感,鼻閉塞感は消失する例が多く,諸家の擧げる成績もペの作用による症状の好轉とは斷定し難く,また大澤氏らの實驗によると,ペ水溶液上顎洞内注入法によるペ洞内残留時間は,注入後5時間でほとんど消失し,12時間目には洞内より消失してもはや全然證明されないといつている。この事實ならびにペの性質より推論して,ペ水溶液を數日間の間隔で注入するのでは,好成績を擧げ得ないのは當然のように思われる。また大藤,石川両氏は40%モを慢性上顎洞炎のあるものに注入すると,注入されたモは洞粘膜線毛上皮の線毛の機能脱落または不全のために,レ線像で完全像を呈し1〜2週後にも完全に排泄されることなく存在するといつている。
OKUSHIMA and TADOKORO tried use of penicillin as suspended in moliodol for instilla-tion in paranasal sinus in treatment of chronic sinusitis. Such a suspension is instilled into the sinus cavity at intervals of 5 to 7 days apart; the results were remarkably effective. With selected cases, the author states that most cases of chronic sinusitis will come to a cure. Penicillin thus used will remain in situ for a considerable period of time; sinus content examined at the end of 7 days showed presence of 500 to 1,000 units.
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