特集 難聽研究の進歩
所謂慢性穿孔性中耳炎(側頭骨炎)に因る高度難聽者の治療に就て
仁保 正次
1
,
高畑 延臣
1
,
岩武 豊治
1
1横浜鏡友会
pp.729-737
発行日 1952年12月20日
Published Date 1952/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200822
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緒言 所謂慢性穿孔性中耳炎,即ち我々の提唱する慢性穿孔性側頭骨炎が長年月の間持續し,遂には聾に近い樣な難聽を来した症例に於ては我々耳科医は殆んど拱手傍観する他はなかつた。而して従来は耳管通気療法,ムック氏吸引療法,鼓膜マツサーヂ,或はヴィタミンB1療法,ピロカルピン療法等枚挙に遑のない程多数の療法があり.又手術的療法としては鼓膜剥離術,聽力保存的根治手術等が行はれ,最近に到りレンパート氏迷路開窓術も試みられて来た。然し乍ら耳管通気療法で聽力の回復を見る位の間は末だよいが,此等の何れの療法を試みても不可なる場合に如何にすればよいかは我々耳科医にとつては大問題である。
斯かる高度難聽の問題は一側耳が健康の際には他側が聾でも殆んど問題にならない。其は一側耳が健康であれば他側は殆んど聾であつても其の患者の社会的生活には殆んど支障がないからである。従つて患者に手術を奨めても肯んじないし,又医師も健側耳に比較し得る如き立派な聽力は望めないから聽力改善を目的とする此手術は奨めないがよい。
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