特集 難聽研究の進歩
耳硬化症の病理と手術療法の変遷
鈴木 安恒
1
1慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科
pp.657-669
発行日 1952年12月20日
Published Date 1952/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200815
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Ⅰ.病理 耳硬化症病理学の発達の段階は大きく3つに分けられる。(4)即ち第1は耳硬化症による難聽の原因が鐙骨の強直によることの発見である。第2は耳硬化症の病機が迷路嚢に原発し,中耳腔の病変は本質的な役割を演じていないことが解つたことである。第3には,その病的機転の組織病理学を現代的技術により示したことである。側頭骨の研究に最初に新しい研究方法を用いた1人の人に故Albert Alxander Gray (イギリス,1869-1936)がある。氏は其の著The Basis of Tissue Ev—olution and Pothogenesis (1937) p.89において「耳硬化症の多くの場合に亞硝酸アミールを吸入せしめると聽力が一時的に恢復することがある。それは亜硝酸アミールが身体内において起す血液の再分配Redistributinoにより酸化された血液をCorti氏器並びに其の他の聽器の主要部分を構成する神経系への供給を一時的に増加故せしめるためである。私がOtosclerosis Paradoxicaなる名称の下に観察し且つ記載せる所の症例においても同樣の状態が起つている。耳硬化症の斯かる見解を支持する他の臨床的観察は,其の症例の大部分において,粘膜のVasomotor responseが欠除せるか,緩徐になつていることを示す。…………………」とのべている。
Grayは又其の著"Otosclerosis"及びJ. La—ryng. and Otol, 49(1934)において耳硬化症の問題を論じているようであるが私は直接この論文を見る機会を得なかつた。
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