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細菌が感染すると炎症が起る。又抗元が入つて体内で抗元抗体反應―アレルギー反應―を起すとやはりアレルギー性炎症が起る。この時に,種々の化学的物質ができる。そして分解して消えてゆく。この化学物質をいくつか把えたのがMenkinである。1940年に出たDynamics of inflammationを読むと,その間の消息がよく書かれてゐる。彼は独自の方法で,LeucotaxinやLeucocytespromoting FactorやNecrosin等をとり出して,炎症の実態をきわめて具体的にえぐり出した。所が,彼は之等のPolypeptidと予想される炎症物質が,一体どこから生れてどこえ分解してゆくかを,それ以上追求しなかつた。所が,最近日本の蛋白質の研究グループがこの点を分析して,次のような予想を立てた。即ち,感染しても,アレルギー性炎症にしても,まず始めに組織のKolloid状態が変化して,組織内のいろいろの酵素系のバランスが破れる。その中で分つている事の一つは,Lipaseが増大して,その結果Antitryptic powerが減少する。すると,その拮抵的作用をもつTrypsinの作用が強くなつて,之が局所の蛋白質を分解してこゝにpolypeptidが発生する。つまり,Trypsin-Antitrypsinのバランスが破れて,Trypsinの作用が強められるとLeucotaxin等の炎症物質が発生する。しかし之等のpolypeptidは更にpolypeptidase等の酵素作用によつて分解し,アミノ酸に変化してゆく。
こうゆう蛋白質分解のSystemは,作用される蛋白質が,アルブミンか,グロブリンか,フイブリノーゲンかによつて,それぞれ,作用する酵素系も異るし,又産生する物質も異るであろう。アレルギー反應の際に生ずる発現物質が,ヒスタミン樣物質であるとゆう学説もあれば,又アセチルヒヨリンであるとゆう学説もある。所で一方に於て,Leucotaxinその他の炎症物質が,はつきりと抽出されたとすると,一体炎症の過程に於て,之等の間のDynamicalな相互関係はどうなるであろうか,
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