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CHINICAI REPORTS
湯浅 浩一
pp.218-221
発行日 1950年5月20日
Published Date 1950/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200346
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咳嗽を訴えた氣管分岐部異物症例
私は最近,柿の種子に因る氣管分岐部異物症例に遭遇した.
患者:11歳の小女,農家族.
初診:昭和24年10月27日.
主訴:柿の種子を吸引後の咳嗽頻発.
現病歴:生來健康である.去る10月9日,姉と柿(当地方で云うキネリ柿)を食べていた際,滑り出た種子が咽喉に引懸り突然呼吸困難を惹起して轉倒せんばかりの苦悶を始め顏色は見る見る中に暗紫赤色を呈し口唇またチアノーゼを來した.姉は驚いて母を呼んだが母はどうして好いかわからず夢中になつて背中を叩いた.暫くすると呼吸困難は拭うが如く去つてチアノーゼも消失し平靜に復したので母姉はほつとした.翌日は別に変りはなかつたが翌々日から咳嗽を見るようになつた.村医の診療を受け内服藥を服用して一時経過良好に思われたが咳嗽頻発するのが夜間に著しくなつたので美濃共存病院耳鼻科を訪れた.X線透規を受けたが兩肺に著変は認められなかつた.勿論,異物の像は映じなかつた.同病院では直達鏡器械を目下注文中であるため紹介されて当院を診れたのである.発病以來実に19日目である.
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