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喉頭結核の物質代謝に關する研究
中村 文雄
1
1京都府立醫科大學耳鼻咽喉科教室
pp.239-242
発行日 1949年6月20日
Published Date 1949/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200189
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喉頭結核が治療困難な疾患であることの一つは本症が單に喉頭局處の疾患でなく,肺結核と云ふ大きな原發病竈を有する全身性疾患の一部分症であることゝ成立機轉の的確な處が未だ充分に解決されてゐないととに原因するものと考へる.
本症を全身的な疾患の一つと考へるならばどの程度に本疾患の場合生體が影響を受けるかを究めることは又成立機序を論じる上に是非明かにしておかなければならない分野であり,治療方法を思考する上にも基礎となる問題である.それにも拘らず本症に對する多くの研究の中にも喉頭結核の生態病理に關する研究は殆んど見ない.吾々は先年來血液像より始め,血球直徑表面張力粘稠度其他の血液の物理學的性状から更に蛋白糖水分其他の化學的性状に及ぶ檢索を行ひ其の成績は各々擔當者が逐次発表したが,それ等の成績を綜合觀察して喉頭結核症の際に於ける生體の新陳代謝の變調態が明かとなり,本症の場合個體が受ける疾病の影響を察知することが出來た.そしてそれ等の成績が肺結核から相當大きい影響を受けてゐるが,喉頭結核を合併せない單なる肺結核の場合の成績とも相違し,肺結核の上に喉頭の病氣が合併されることによつて更に變化が展開することも明かとなつた.然し之等の實驗からは未だ本症の成立機轉の核心に迄触れることは出來なかつた.故に之等一連の研索を基礎として本症の場合の各臟器の組織呼吸の方向から研究を進めたのが之の實驗である.そして吾々はそれ等の成績を綜合して物質代謝の面から本症の成立機轉を考察し,その上に正しい治療法を樹立したいと考へてゐる.實驗は全部完了の域には達してゐないが今迄行つた結果を報告し今後の方針を述べる.
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