論説
口蓋扁桃腺剔出後に起れる頸部放線状菌病の1例
三好 佑
pp.115-118
発行日 1948年6月1日
Published Date 1948/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200072
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緒言
由來頸部は放線状菌病の好發部位として知られ、その侵入門としては骨疸齒牙及び扁桃腺が擧げられているが、後者の場合に就てはルージエ、ミオドウスキー、ライト、グロスベノール、デートリツヒ、齋藤、富田等によつて扁桃腺組織中に放線状菌樣菌塊が證明されると共にその頻度及び病原性の有無が論議の對稱となつた。而るに田中、小田は104箇の口蓋扁桃腺の組織學的檢査を行ひ、その76%の多數にアクチノミツエス・ホミニスと思はれる菌塊を證明し、扁桃腺が頸部放線状菌病の有力な門戸である事を指摘した後、小田は更に此の事實を裏書きする症例を報告した。吾教室の白幡も又放線状菌菌塊を證明した口蓋扁桃腺を剔出する事により治癒せしめ得た頸部放線状菌病の1例を報告している。斯くの如く口蓋扁桃腺と頸部放線状菌病との間には一連の因果關係の存在する事が想像されるのである。
一方從來口蓋扁桃腺剔出後の頸部合併症として報告されたものは頸部蜂窩織炎、頸靜脈血栓、急性淋巴腺炎、頸部瓦斯壞疽等多々あるが頸部放線状菌病を來せる如き症例は未だ之を見ない。
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