論説
氣管切開後出血の一考察
中西 一郞
1
1京都府立醫科大學耳鼻咽喉科教室
pp.140-141
発行日 1947年12月1日
Published Date 1947/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200033
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1)緒論
抑々氣管切開は頸部外表より氣管内部に入る最古の手術として,己に『チチエロー』の時代に行はれしも十九世紀に入り漸く一般に施行さるるに至れり。且本手術は種々の場合即ち
1.喉頭,氣管に異物の嵌入せる場合,2.頸部腫瘍又は腫脹による呼吸困難の場合 3.上氣道ヂフテリー 4.聲内鎖筋の痙攣及開大筋の麻痺,5.聲門の浮腫,腫瘍,喉頭軟骨及粘膜の疾患により狹窄を來せる場合。6.豫備手術として上顎切除及喉頭部手術の場合等に施行され,頗る重大なるものなり。
而して氣管切開によつて來る不快症状としては,皮膚氣腫,創口蜂窩織炎,氣管の褥療,套管抜去困難症,後出血等あり。最も恐るべきは術後數日,數週後に於て來る致命的大出血なり。扨て氣管出血後に起る大出血及之に起因する急死に就ては歐米文獻には可成り多くの報告を見,『ベール」の1.05%ヨリ」チンメルリン』の3.54%に達し敢て稀有とするに足らざるも,我國に於ては此種の文獻比較的稀なるを以て,余が最近經驗せる一例を報告し以て諸賢の御批判を仰がんとす。
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