巻頭言
氣管支血管系
中村 隆
1
1東北大学
pp.1
発行日 1955年1月15日
Published Date 1955/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200191
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19世紀既にGalenは大動脈が肺に小血管を送つていることを述べたが,Columbusにより否定せられ,Dominico de Marchattis(1656)が再び記載するも省みられず,従つて気管支動脈の発見はRuysch(1721)に帰せられている。而してReisseisen及びSommering(1808)がこれを肺のVasanutriaとして記載して以来,Virchow(1849),Kuttner(1878,Zuckerkandl(1883)等気管支動脈と肺動脈の緊密な結合を述べるものもみれらたが,一般には肺の栄養血管として等閑に附されて来た。Ellis(1951〜53)らは気管支動脈はVestigial circulatory systemで,生前重要であつたが,生後正常肺における気管支動脈の為す役割が明らかでなく,肺門部を除いて殆んど意義ないものと考えた。しかしながら病的肺ではこの気管支動脈が再び肺における重要な任務を遂行するようになると考えられるに至り,殊に近年心肺に関する著しい研究の進展は必然的に肺の構造と機能の不可分離な関係から肺内血管の構造とその意義に対する関心を当然喚起し,気管支血管系の研究は各分野において今や至甚の注目をあびるに至つて来ている。
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