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光線過敏性を検する手段として,紫外線による皮膚の紅斑反応の強弱を比較する方法が広くおこなわれている。しかし,この紅斑反応には,波長を始めとし被検部位の解剖学的差,判定する時間など,影響する因子が多い。そこで著者らは,①与えられたエネルギーの量,②波長,③判定時間,④被検部位という4因子を特に重視し,これら因子と紅斑反応との間の関係を実験的に追究した。1)判定時間:健常者13例の腹部に,xenon arc monochromator(J. Invest. Dermat., 45 ; 190, 1965)を用い,250〜310mμ間の9種の波長の紫外線を照射し,目で見うる紅斑を生ずる最小エネルギー(最小紅斑量)を測定,各種の判定時間毎のエネルギーと判定時間との関係をグラフにとり比較した。生ずる紅斑の色調は,短波長の場合ピンクで,一方長波長の場合はより暗赤色調をおびていた。この結果,波長に拘らず,4時間後だと紅斑反応はまだ不完全であるが,8時間後だと完全に発現し,一方24時間後になると短波長の場合かえつて減少することのあるのが知られた。254,280,297mμという波長に関し最小エネルギーと時間との関係を表示してみると,8時間後に最も十分の反応が認められ,所要エネルギーは最小であつた。次に,8例につき照射を午前,午後,深夜などいろいろにかえて検対したが,照射する時期は特に影響を与えないことが知られた。以上の結果を要約すると,紅斑反応は波長と判定時間により変動するものであるが,紅斑判定に最も適した時間は照射後約8時間であると考えられた。2)被検部位:12例につき297mμ波長の単色光を各種部位に照射,8時間後の最小紅斑量と部位との関係を比較した。この結果,躯幹,頭郎,頸部は四肢に比しより鋭敏で所により1/4量のエネルギーで十分なことが知られた。次に,8例につき254,280,297mμという3種の波長を用いて同様の実験をおこなつたところ,前腕屈側や下腿の場合には,波長が異なると最小紅斑量も異なり,かつそのエネルギー量の巾もかなり大であるが,一方腹部の場合には波長に関係なく一様に,最も鋭敏であつた。以上の結果から,紅斑反応を判定するには,鋭敏性が高く全波長において一様に反応するという利点から躯幹が最も適している。R. L. Olson, R. M. Sayre& M. A. Everett: Effect of Anatomic Location and Time on Ultravio-let Erythema, Arch. Dermat., 93;211,1966
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