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腎は血管の非常に豊富な臓器であるに拘らず二次的転移性腫瘍の発生を見る事は少いものでWills(1952)は500例の悪性腫瘍剖検例に於て腎転移を認めたもの8%であったとしている。然しGalluzzi and Payne(1956)は気管技癌の剖検例の総計で腎の偏側又は両側に転移を認めたもの17.5%で,一般の悪性腫瘍の場合の2倍の転移率を示した事を述べている。腎の転移性腫瘍は生前に臨床症状を呈する事が少ないために生前に発見される事は稀で大部分のものは剖検時に発見されるものである。
著者は肺気管技癌の腎転移症13例について述べているが,何れの症例も生前に腎腫瘍が発生されたものである。症例中男子12例,女子1例で,女子の1例は生前に両側の腎腫瘍と診断されたが,死後の剖検にて原発病巣が肺にあった事が確認されたものである。この13症例中9例は生前に腫瘍転移腎の別出術を施行して肺における癌病巣手術組織所見と同一である事を確認し得た。転移腎の組織所見は8例が扁平上皮癌,3例は未分化癌,2例は腺癌であった。腎別出を行つた症例は何れも血尿,腎部疼痛を訴え,腎盂撮影にて腫瘍所見を明らかに認め得たものである。一般に転移性腎腫瘍が臨床的に明らかになる場合は肺における原発巣が当然確認され或は治療をされている事が多いが,著者の女子の症例の如く肺における原発巣が全く不明であつて腎腫瘍が発見された症例はPayne(1960)も3例の自験例をあげている。腎腫瘍からの肺転移は屡々孤立性の転移であるので腎と肺を外科的に処置する事で患者を救い得る事がある。然し乍ら腎,肺に腫瘍を同時に発見されるものは肺に原発巣がある事が多く予後は不明で,著者の13例は何れも腎に転移性腫瘍が発見されて1年以内に死亡している。
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