交見室
副腎への転移様式,他
勝岡 洋治
1
1東海大学
pp.806-807
発行日 1992年9月20日
Published Date 1992/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413900691
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本誌40巻5号に掲載された大竹らの論文「対側副腎転移を伴った腎細胞癌」を拝読した.筆者も過去に同様の症例を経験し,腎細胞癌の副腎転移(同側および対側)の頻度と転移様式につき,若干の文献的考察を行ったことがあるので,それらの要旨を述べ,本誌報告例の参考に供したいと思う.
当時,本学に在職されていた斉藤博先生(現埼玉医科大学総合医療センター泌尿器科教授)は,尿路性器腫瘍の転移様式に関心をもたれ,日本病理剖検輯報に集録されたデータを分析しておられた.先生の部屋にはいくつものダンボール箱が所狭しと山積みされていた.すでに先生はそれらの膨大な資料から腎細胞癌の転移様式について詳細な分析を行い,その結果を欧文雑誌に発表しておられた.これらの論文は今日でも内外で広く引用され,この分野の研究には必須の資料となっている.それらの調査資料によると,剖検所見にて転移が確認された腎細胞癌1293例のうち,単一臓器の転移が120例(8%),2つ以上の複数臓器への転移を各臓器の頻度でみると,副腎については同側17%,対側11%と,意外に多いことが認められている.これらの頻度は諸家の報告と一致する.しかし大半は剖検所見より得た成績であり,生前に副腎への転移が発見される頻度はきわめて少ない.近年,術前に発見される症例が増加しているのは,本誌報告者の指摘するように画像診断学の進歩が大きく寄与していると思われる.
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