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第29回東日本皮膚科連合地方会は,橋本謙昭和大教授を会長とし,昭和40年10月16・17日の両日,昭和大学において開催された。今回は,通例の一般演題,スライド供覧の他病理組織検討会,アレルギー懇話会も催され,更に特別講演者として米国シカゴ大学教授A.L.Lorinczが来日されるなど実に盛会であつた。第1日は,定刻午後1時,橋本会長の開会の辞に続いて一般演題がはじまつた。まず皮膚科領域における線維素溶解酵素系に関する報告が,園田ら(東医大),山本(国立小児),および古谷野ら(岩医大)によりおこなわれ,また昆ら(岩医大)は抗プラスミン剤AMCHAの臨床治験成績について述べた。次に皮膚における免疫現象の観明を目的とした報告がなされた。橋本ら(弘大)は寒天ゲル内沈降反応により薬疹患者血中の抗体検出をはかつたが失敗であつたと述べ,吉田ら(横市大)は淋巴腫,類肉腫などにおこなつた各種皮内反応の結果を比較検討して皮膚における免疫不全につき論じ,手塚ら(東医歯大)は人工抗原を用いて皮膚に接触アレルギー性感作を生ぜしめる方法を発表した。何れも興味深い研究であつたが,皮膚における免疫現象の解明にはまだまだ未解決の問題が多いことが痛感させられた。次に磯部ら(慈大)はキモグラフを用いて毛髪の機械的性状をグラフ上に示し,佐藤ら(新大)は円形脱毛症における病変部の血管分布状態を立体的に図示し,興味をひいた。次に演題は治療上の諸問題にうつつた。まず高島ら(北大)は各種の副腎皮質ホルモン軟膏の治験成績を比較検討し,一方野波ら(都立駒込)はステロイド軟膏外用による副症状として,頸部に魚鱗癬様変化を生じた興味ある症例を一括して報告した。これに対し,類似の症例が多くの機関から追加報告された。ステロイド軟膏乱用の傾向がある現在,注目すべき問題であるといえよう。次に臼井ら(国立栃木)は乾癬の治療に胆汁分泌促進剤が有効であつたと述べ、安西ら(関東労災)は熱傷潰瘍に植皮するにあたり,ポリビニールスポンジ,ジメチルポリシロキサン膜を用いると極めて良好な結果を得ることを報告し,興味をひいた。また石井ら(群大)は雪状炭酸療法のみにより老人性疣贅を全治させ得ると報告し,植村ら(都立広尾)は梅毒患者血清反応の統計的観察を述べた。引続き同じ会場において,アレルギー懇話会が開かれた。鈴木ら(都立大久保)は,DNCBカンタリジン,ホルマリン,苛性可里,火傷,紫外線などによる皮膚炎の組織変化について,また堀口ら(東邦大)は溶剤を用いた貼布試験の成績について述べた。次いで山田(市立甲府),佐藤(日大),高瀬(信大),小林(千大),谷奥(岡大),宮沢(仙台逓信)による貼布試験に関する討論がおこなわれたが,貼布試験の部位的差異,allergic reactionとirritant re-actionとの鑑別などに議論が集中した。
これらと平行して,午後0時30分より第2会場において,病理組織検討会がひらかれた。会場にははやくから多数の会員がつめかけ,Lorincz教授をまじえて熱心な討議がおこなわれた。供覧された症例はPityri-asis lichenoides et varioliformisacuta(北大),持続性隆起性紅斑(千大),Duhring疱疹状皮膚炎(東北大),Trichoepithelioma(東京逓信)診断例(慶大)Epitheliomaplanum cicatrisans(東医大),膨大細胞腫(弘大),限局性被角血管腫(横市大),Angiokeratomalabii majoris(福医大)Reticuulm cell sarcoma(札医大)Lympho-ma(金大)診断例(順大),癩腫癩(新大),ゴム腫(東大)で,討議は主として如何なる所見を重視して診断するかに向けられた。皮膚科領域における病理組織学の重要性を考えるに,かかる会合を催された橋本会長に深い敬意を捧ぐるとともに,学会の行事の1つとして,今後も続けられんことを希望するものである。
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