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終戦後20年たつて東京は早くもうすぎたなくなつてきたが,東京から新幹線でわずかに2時間の名古屋では,まだ日に日に近代的なよそおいをととのえつつある。第16回中部連合地方会は名古屋市大担当,伊賀教授会長の下に11月23目,名銀ホールで開催された。この会場の広さは至極適切で,しかもどこにいても大へんよく聞えるとあつてか,討論も中々活溌に行なわれた。
阿部ら(岐大)は実験的家兎梅毒性睾丸炎における超薄切片により電顕的にTreponema pallidumの所見をのべ,形質細胞との関連を思わす所見に言及した。これに対し相模(阪大)はトレポネーマの小胞体による貧喰という所見に疑義をのべた。上田ら(京府大)は異常角化を示す疾患として,Darier氏病,Bowen氏病,有棘細胞癌をとりあげ,TonofibrilとDesmomeの関係の異常あるもの,核に異常あるものなどがあるとした。これに対してTonofibril-Desmosome relation—shipや演者の示したDyskeratotic materialと称する無構造物質について質問があつた。藤田ら(山口大)は人の胎児のNeuro-muscularjunctionについて電顕的所見をのべた。佐々木ら(神戸大)はBehcet病,Duhring氏病等水庖性疾患中の血清リゾチーム活性を調べ,血中値が高く,疾患の回復と共に正常値にもどること,また治療に高値を示すとぎにもリゾチームを投与することで効果をみたとのべた。坂本(奈良大)は帯状庖疹のようなウイルス性疾患に対する効果についてはつきりした結論をえないと追加した。神畠(神戸大)はUDPG-DH活性を調べ,ラッテ皮膚,腹腔内肥胖細胞およびUnna型蕁麻疹の肥胖細胞では,酵素活性は未成熟型細胞に強く,活性は顆粒の減少と共に下るとのべ,尋常性乾癬の不全角化層とか結節性紅斑等の血管炎の血管壁にそれぞれ活性の増強がみとめられたとした。高安(阪大)はオートラジオグラフにより,C14ヒスチジンが表皮顆粒層に多くとりこまれること,蛋白以外にRNAにも相当量転入するとした。次に神戸医大,市立豊中,大阪日生,大阪逓信,大阪警察,大阪厚生等各施設共同による下着皮膚炎に関する調査成績が報告された。1年間の症例36例で,湿疹型を呈するものが最も多く,Gibert様紅斑を呈するものもみられるという。テトロン,ナイロン等の新品によるものが多いが,古いものでも起ることがある。貼付反応は11例中6例が原因下着と一致したという。この演題には多くの質疑討論があつた。私見を加えながら要約すると,下着と関連すると思われる皮膚病変は少からず経験されるが,先ず下着皮膚炎の定義をいかにするか,Gibert様紅斑を呈するものを下着皮膚炎ときめる根拠,繊維の種類ばかりではなく抗原性物質として欧米でしばしば指摘される色素,加工薬品の検討等が今後に残された問題であろうと思われる。藤田ら(山口大)は山口県における皮膚疾患の発生状況について報告,山口県の地理がよく分らないので,発生状況とその意味付けがよくのみこめなかつたが,ガン検診で3%強の皮膚癌を見出したこと,精神病院に母斑,母斑症,色素異常が多いこと,瀬戸内海地方に梅毒の発生が多いことなどがのべられた。中井ら(関西医大)は最近3ヵ年の膿皮症から分離したブドウ状球菌のファージ型別同定成績をのべ,3剤以上に耐性の株はI群81型に多いという。志水ら(国立大阪)は梅毒診断におけるFTAテストの優秀性を強調した。また潜伏期BFPの時に非常に優れているとのべた。塚田ら(金沢大)は最近6年半における48例(完全型29例)について臨床所見を詳細に検討報告した。ここで岩下,坂本両教授の治療の観点に立つた発言があったが,Behcetとされるものの中には,予後特に眼の予後に関して絶対不良のものから,比較的軽症のものまで含まれ,従つて治療効果も異なるわけであるが,単なる皮膚科学的興味からいたずらにBehcet病の不全型というものをつくり出す最近の傾向は私見として賛成しない。その点では演者らのBehcet病の規準は無理のないものと感じた。小堀ら(東京逓信)はカンタリジン発疱による角質全層剥離標本を用いて,白癬菌の分布,寄生形態,PAS染色性,ナフチオメートの影響等について,水野(東大)は紫外線1回照射によるメラノサイトの質的量的変動についてのべた。
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