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Chefのところに直接受診する所謂Privatpatientenはすべて自費であり,最初からVereinbarungをとつてChefの診療室に来るのであるが,一般外来は全部附近の開業医から送られて来たものばかりで,患者自身が直接に訪れる事は出来ない。皮膚科を標榜する開業医は4年以上大学皮膚科で修練を受け専問医の肩書を持つた医師であるから大ていの皮膚病は処置に困らないし,又患者が何かの病気で何処かに受診しようとする時には先づ開業医に行く事になつている。だから開業医もあまりPRに意を用うる必要もなく,無理をして体力の限界を越えた労働を自らに強いる事もない。開業医で検査の出来ない場合,治療に困る場合には大学に送られて来る。大学では2〜3回来院させて検査が終るものはそれで結果を手紙に書いて外来のみで終了させるが大ていの場合は入院させる。入院室はPtivatstationは全部個室であるが,一般患者は全部大部屋で,我国の様に差額をとる部屋はない。重症の場合は数少い小部屋に入れるが差額はない様である。この様に大学に来る患者はすべて開業医で診断のつかぬもの,原因につぎ種々の検査を必要とするもの,治療の困難なもの等であるから,大学にいると経験出来る疾患の種類が比較的限定されて来る。従つて大学で見学した疾患がドイツでは多い,そこで眼につかなかつたのはドイツでは少いという事にはならない。
一般患者用のBettは約170床あるから大ていの場合はすぐ入院させる事が出来る。附近からの開業医からの紹介といつてもFrankfurt近辺には大学病院は一つしかないから相等遠くからも送られて来る。
これだけの入院患者があると週3回の臨床講義に毎回3〜4例宛出しても症例に事欠くような事はない。臨講には外来に初めて訪れて来た患者でも講義前のVorstellungの時Chefが下見をしてすぐ出す場合もしばしばある。その様な場合患者は朝早く来ても半日つぶす事になり,更に写真を撮る場合はそれ以上待たされるわけであるが一般患者はよく我慢している。Photographはスライド係りとして講義についているので結局講義が終る迄は写真は撮れず,その間患者は慢然と待つていなければならないのである。検査という名目でプローべも実に思いきつた取り方をするので患者に同情したくなるような事すらある。学問の為という事と,権威に服従するという事で患者はよく協力しているが…。検査が終り大学での治療を要せぬもの,治療のほぼ終了したもの等は送つて来た開業医に詳しい手紙を付けて返す。そのために病棟の主治医は何時も手紙書きに忙殺されている。
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