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I.はじめに
cystein,還元glutathion,BAL等はsulfhydryl radical (以下−SH基と略す)を有する化合物であり,特にcysteinはmethioninと共に合硫アミノ酸の一っであって,生体の生成にあつかる重要な物質である。そもそも−SH基化合物が医学の分野に於て研究者の注目を引くようになつたのはHopkinsがglutathionの生体に於ける重要な役割――細胞内酸化還元――を指摘してからであり,その後の研究により生体に重要な酵素,特に肝細胞の酵素系を安定化し,かつ活性を高め,肝実質の壊死を招く感染または毒素による障害に対して有効であることが明らがにされて来た。皮膚科の領域に於てはPercival1)がnitroprusside反応によつて,角化現象或は色素形成に於ける皮膚SH基の作用を検討してより,この方面の研究は活発となり,ケラチン生成,メラニン形成或は炎症病変に於ける−SH基の変動が研究の対象となり,−SH基の皮膚代謝に占める位置は極めて重要なものとなりつつある。−SH基の代表的物質であるcysteinは少量の鉄或は銅の存在に於て空気中の酸素によつて酸化されてcytine(−S−S−結合)となり,cystineは錫或は亜鉛の存在で還元されて容易にcystienになる。組織内でも同様な酸化還元が行なわれる。正常表皮に於ける−SH基,−S−S−結合の分布はVan Scott and Flesch2)の研究によつて従来の概念――−SH基はマルピギー層,−S−S−結合は角質層――が修正され,−S−S−結合はマルピギー層にも多量に含まれ,両層に於ける量はそれぞれ同一であること,−SH基はマルピギー層に存在するが,−S−S−結合より少量であること,しかも更に少量であるが,角質層にも−SH基が含まれていることが明らかにされた。皮膚代謝の主要な一つであるケラチン生成に於けるcystein,cystineの役割は極めて重要である。亦−SH基,−S−S−結合が各種酵素と密接な関係を有して居り,例えば−SH基にはメラニン形成に於ける酵素tyrosinase活性を阻止する作用,したがつて−SH基にはメラニン形成阻止作用があることが解明されて来た3)。
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