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I.はじめに
網内系がアレルギー性炎に於て果す役割,特に抗体形成に於ける役割は誠に重要であり,網内系機能の刺激により抗体産生は増強され,その反対に障害により抗体産生が低下することはよく知られる事実である。所がこの資料はアナフィラキシー反応或はアルチュス反応の如き所謂即時型アレルギーにあてはまるものであつて,アレルギー性接触皮膚炎或はツベルクリン反応等の如き所謂遅発型アレルギーに対して直ちに適用することにためらわざるを得ない。というのは遅発型アレルギーに於ては即時型アレルギーと異なつて,その抗体を血清内に証明することは,極めて困難であり—極めて一部にγ—globulim内にPrausnitz—Küstner法により証明されたという報告1)もある—,したがつて網内系と接触アレルギー抗体を結びつける実験的資料に欠けているからである。一歩退いて,アレルギー性接触皮膚炎も炎症の一形式であり,網内系が炎症の表現形式と密接な関連を有する点より,接触アレルギーと網内系との間に関連性があることは当然考えられる所である。赤崎,小島2)は各種網内系機能促進物質,或は阻害物質で前処置した場合の炎症態度を検討し,網内系機能亢進状態が炎症に於て急速かつ激烈なる反応を招き,反対にその減退により炎症反応が減弱してくること,従つて網内系細胞の活力の程度如何が炎症反応の表現形式,とくにその量的な面に於て重大なる影響を与えることを明らかにし,炎症発生形式の一般的概念に対する網内系の主動的役割を解明した。
私達3)は接触アレルギーに於ける網内系の役割を検討するため,先ず赤崎,小島の概念が接触アレルギーに適用されるか否かを実験し,その成績の大要については,第4回国際アレルギー学会に於て発表した。即ち海猽及び家兎の2-4:dinitrochlorobenzene接触皮膚炎,Salvarsan過敏症に於て,Trypanblau,ウマ血清の如き網内系刺激物質で前処置すると,感作の成立は容易となり,アレルギー反応は増強し,その反対にEvans Blueの如き網内系阻害物質で前処置すると,感作成立は困難となり,アレルギー反応は低下する実験成績を得,接触アレルギーの成立に於て網内系が或る役割を演ずることを実験的に証明した。私達はこの最初の実験によつて得られた網内系の役割を解明するために網内系を淋節巴にしぼり,接触アレルギーの成立と淋巴節との関係の追求に努力して来た。今回は今までに得た成績について述べ,接触アレルギー成立に於ける網内系の参与を推論したい。
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