--------------------
思いつくまま(22) レジャーブームの由来愚考
矢野 登
pp.1107
発行日 1962年12月1日
Published Date 1962/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491203411
- 有料閲覧
- 文献概要
レジャーと云う語がマスコミに頻繁に使われており,俗に物見遊山とか,遊びとかの意味に解されている様である。小生も真の意味がどんなものか理解していないが,以上の様な意味のつもりで自分なりに思考の遊戯を試みた。
産業界の進展は近年目覚しく,特に所謂流れ作業で,「ねじ」を一寸曲げる作業とか,缶詰のふたを附けるだけとか,ほんとに極く簡単な小さい操作の反復に過ぎなくなる傾向が強い。又食物でも,デパートあたりで,所謂インスタント食品が多くなり,一寸水をまぜるだけとか,あたためるだけとかして食べる。大変簡便で手が省けるけれども,材料を集めて料理してできる様な,よい味のしつくりしたものは少くなつてくる。すべてが,味気ない,無味乾燥な姿となつてくるのではないだろうか。その様な事が,寸暇をさいても旅行したり,遊びに行きたくなる原因ではないだろうか。然し旅をするにも,無茶苦茶な人出であり,又観光地も段々劃一化する傾向にあると云えないだろうか。どこに行つてもロープウェー,覗き望遠鏡があり,大同小異となつてくる。この様な所謂「人間性の阻害又は喪失」がレジャーブームの一因ではないかと考える。又産業の発展による報酬の増大が之に拍車をかける。
Copyright © 1962, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.