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日本皮膚科学会第11回中部連合地方見聞記
太藤 重夫
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1京都大学医学部皮膚科
pp.176-177
発行日 1961年2月1日
Published Date 1961/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491203002
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日本皮膚科学会第11回中部連合地方会はさる11月3日大阪医大に於て,栗原会長司会の下に開催された。参会者約120名。招請講演として,田部教授(大阪医大)が島根県宍道湖畔の風土病である湖岸病に関する研究を報告された。急性症といわれるものは,田植作業の期間に好発し,水田に入ると生ずる掻痒性皮診で,組織学的には表皮内水疱を見るものであるが,これは椋鳥住血吸虫のセルカリアの表皮内穿入によるものであることを明かにされ,又この吸虫の宿生生物は全国に分布し,この急性症は単に島根県に限らず中国,近畿,東海,その他の農村にも発生するものであると述べられた。我々としてもこの種,病変を常に考慮しなければならないことを教えられた。又慢性症といわれるものは,手背の慢性皮膚炎であり,低栄養状態,特にビタミン欠乏症を素因として,水田作業時の皮膚障害により惹起されるものであり,ビタミン剤投与により軽快する。シビ,ガチャツキ,とは異る病像を呈するものであり,宍道湖畔固有の疾患であることを示された。
特別講演として安原助教授は「汗腺の組織学細胞化学」と題し,約30種にのぼる染色法を馳使した多数の見事なスライドにより,詳細な所見を述べた。e腺腺細胞は不規則乍ら一層に配列することを先ず確認し,その内,明調細胞には従来明瞭に観察されなかつた細胞間及び細胞内分泌細管を明確に認め,明調,暗調細胞は分泌周期の異つた相を現わすものではなく,性格の異る細胞であることを示した。
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