角化性皮膚疾患とビタミンA—第2報 尋常性魚鱗癬患者の臨床的諸検索

KERATOTIC SKIN DISEASES AND VITAMIN A : Ⅱ. CLINICAL STUDY ON ICHTHYOSIS VULGARIS.

緒言

　尋常性魚鱗癬の病理機転に就いては久しく角質増殖による先天異常と做す形態学的見解に終始していたが，その間に於いてもThibiergieは皮膚栄養障害と推憶し，Brocq，Weidenreichは発汗障害を第一因と重視し，夏季寛解する臨床的事実と汗腺の稀少な組織所見との裏付けにより機能病理説の先鞭をつけ，Waldorp u．Basombrioは交感神経系の障害を考え，Sjorjevic u Pavelovicはピロカルピン注射による治験に基づき植物神経機能低下を推測していた。従つて内分泌腺との関連も当然想到され，特に発汗異常の点から甲状腺障害を推察する学者も多く，Porter，Bramwell，Weil，Fox，Vincent，Sherwell等は粘液水腫を合併せる例を報告し，Beck，Deusch，Neuhausは剖検で甲状腺の病変を記載している。就中，基礎代謝を検査した症例は相当多く報告され，Rud，Krogh u With，Levy-Frankelet，Juster，Sainz u Puyon，Porterは概ね低下を記載し，Urbach，ralbot u Hendry，Siemens，熊沢，田中等は寧ろ亢進した例をあげている。

　若林のKnipping検査では亢進2，正常7，低下2を得，亢進の1例はバセドウ氏病を合併した患者であつた。