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骨盤腎の症例追加
佐藤 美正
1
,
千代延 良和
1
1徳島大学医学部皮泌科教室
pp.1011-1014
発行日 1956年12月1日
Published Date 1956/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201839
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まえがき
腎は胎生第3週に於て腎節より発生する前腎(Pronephron)に始まる。原腎(Mesonephron,Wolff氏体)をへて後腎(Metanephron)は胎生第1ヵ月で小骨盤腔内にあり,第2カ月前半で尿管に押し挙げられて上昇運動を起して,第2カ月後半で前方に向つた腎門が徐々に内方に向う(軸廻転運動)。第3,4カ月でやつといわゆる正常位をとるといわれるからこの間に於ける発育異常は偏位腎,又は軸捻転腎となり,多くは両者が合併することになる。即ち胎生期の腎上昇運動機転の障碍により上昇牛ばにして止まり,軸廻転運動も停止して,此処に発育不全偏位腎(骨盤腎)が発生する。
骨盤腎は以前は病理解剖,又は手術の際に偶然発見せられた事が多く,甚だ稀有な疾患と考えられた。泌尿器科的診断技術の進歩は本症の発見診断を容易にし本邦でも30例が報告され,先天性腎異の20%を占める(高橋,市川)といわれる。私共も右腎臓結石をともなつた本症の1例を経験したので此処に症例を追加し,併せて本邦報告例について統計的観察を行つた。
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