特集 皮膚泌尿器科領域の腫瘍
腫瘍の放射線療法
山下 久雄
1
1慶応義塾大学医学部
pp.847-853
発行日 1956年12月1日
Published Date 1956/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201818
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はしがき
皮膚泌尿科領域に於ける放射線療法は最も早く進歩発達した領域で,CurieによるRadiumの発見の翌々単にStenbeckが鼻部皮膚癌の全治を報告している。皮膚は特に観察が容易であるためにその応用が早く普及され,吾国でも土肥慶三教授がラジウムを持帰られたのは大正初期(1913)であつた。そのような訳で放射線療法の進歩のためには皮膚泌尿器科関係の研究が重要な役割を演じた。特に皮膚癌の多い欧米のその方面に対する活用と,膀胱癌に対する米国での研究とが目立つている。
癌の治療に対して最も早く良結果を得たのはRadiumのγ線療法で,Dominici,Regaudの功績が大きく,FaillqのRadonseedsの活用は膀胱癌などに素晴しい効果を斉した。表在性の腫瘍特に皮膚の表皮腫Epithelioma,Basaliomaに対してはRadiumのβ線療法も著効があり,扁平容器(Radium plaque)も広く利用され,又Cha-oulの近接エックス線照射(Nah-bestrahlung)も優れた治療効果を示すものである。エツクス線照射としては,Coutardの遷延分割照射(Protractedfractionated irradiation)に初まり,弱線又は分割による放射線の腫瘍に対する選択的障害作用(El-ectivity)が重要視されるようになつて,深在性の腫瘍に対する治療効果が著しく向上した。
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