発行日 1947年11月15日
Published Date 1947/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906260
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看護婦といふものが我が國に出來て以來,間も無くそれは世界一だといふ名聲が確立した。封建數百年の傳統に養はれてよく氣が附き,體力が永續きがし,また意志が極めて強固である。結局對人的に非常に聰明で,また一念にずうつと集中して少しも弛まない全精神の働きであらう。
しかし女性にこの特徴は或ひは世界の古今を通じてのものであるかも分らない。我が國では專ら相手本位に,サービス滿點主義で今日まで押されて來て,的が無くなつた時以後はやゝ手持ち無沙汰の觀が見られるやうである。たとへば良人を失つた妻,子に訣れた母のやうに。大和撫子らしい優しみが却つて缺點となつて,毅然たる心行き,態度が望まれる場台もしばしばある。しかし女性本來の強さはその危機をも敢然乘り越え,身體は死んでも心は執念となつて現世に殘るといふのが本來なのではなからうか。シェイクスピヤの『弱き者よ』でなく,『強き者よ,汝の名は女なり』の方が實際は正體の底を突き詰めてゐるやうにも思はれる。少くもフランスの最大小説家バルザックはさう見てゐる。
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